髭にまつわる話しのひとつに、「剃ったり抜いたりしたら、髭が濃くなる」というものがありますが、この話に医学的な根拠はありません。おそらく、毛先の細い部分を剃った後に根元の太い部分が見えてしまうことから、「毛が濃くなった」という誤解が広まったのでしょう。
実際に髭の濃さに関わっているのは、男性ホルモンの分泌量です。ここでは男性ホルモンと髭の関係についてご紹介します。
私たちの体内では70種類以上のホルモンが作られており、これらがバランス良く働くことで健康な心と体を保つことができています。男性の性ホルモンのことを「男性ホルモン」と呼び、脳の視床下部、甲状腺、膵臓、副腎皮質、副腎髄質、卵巣、睾丸などで作られています。なかでも睾丸で作られるテストステロンは骨や筋肉を増強し、発毛にも関わりがあります。
ホルモンは血液中に分泌され、全身に運ばれた後、そのホルモンに対する受容体のある細胞で取り込まれて、能力を発揮します。
男性ホルモンであるテストステロンは、毛乳頭細胞にある受容体と結びつきますが、このときに酵素である5αリダクターゼⅡ型によって活性化されます。
この5αリダクターゼⅡ型は、頭頂部や髭などの限られた毛乳頭細胞にあり、頭髪の発毛を抑える作用と、髭の発毛を促進する作用があるのです。
このことから男性ホルモンであるテストステロンが増えれば、髭が濃くなり、少なくなれば、髭は薄くなるということが言えます。
髭を濃くする原因である男性ホルモンのテストステロンは、生活習慣によって量が増減します。テストステロンが増える主な理由には、次のようなものがあります。
動物性たんぱく質は、テストステロンを増やすので、肉類の過剰摂取には注意が必要です。また、ネギ類も短時間でテストステロンを増やします。
短時間での激しい運動や筋肉を増強させるトレーニングは、男性ホルモンが活性化されやすくなります。
髭を濃くする原因を取り除くだけではなく、次のような方法でテストステロンの分泌を抑制することができます。
大豆はたんぱく質を豊富に含みますが、動物性たんぱく質と異なり、テストステロンを増やしません。また、大豆や大豆製品に含まれるイソフラボンには5αリダクターゼの働きを抑える力があります。
女性ホルモンの分泌を促したり、女性ホルモンと同じような働きをする香りを嗅いだりすることで、テストステロンの分泌を抑えることができます。
男性ホルモンであるテストステロンの分泌量を正常化することによって、髭を薄くすることが期待できますが、個人の体質や遺伝などが要因で髭が濃くなることもあります。男性ホルモンの分泌を抑制する生活習慣を心掛けても改善しないようであれば、クリニックでの脱毛を検討すると良いかでしょう。